深い緑のきらめきに託された記憶 (あるペンダントの物語)
ある日、一人の女性が静かに工房を訪れました。
手には、小さな布に包まれた大きな緑の石。「母から譲り受けた、大切な石なんです」と、穏やかに語ってくださいました。
深い森のような緑を湛えたその石には、言葉では言い尽くせない想いが込められているように感じました。

私はその石にふさわしい“かたち”を探して、ふたつの原型軽やかなものと、ほどよく厚みのある重厚なものをご用意しました。

石を手に取りながら、最終的に選ばれたのは、存在感をしっかりと受け止める厚みあるデザイン。
その選択に、石の強さと物語を感じるようでした。
鋳造が出来上がり、磨きをかけて少しずつ輪郭の石留めが進み完成に近づくと、石の輝きにも変化があらわれました。

仕上げの磨きを終えた頃には、まるで鏡のように光を映し返し、胸元にそっと寄り添う準備を整えていたのです。


そしてお渡しの日。
手のひらに収まったペンダントを見つめながら、女性は微笑みました。そのやさしい表情が、この物語の結びとなりました。
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